高齢者向けサービスをビジネスとして見た際の一番大きな魅力は、これからも伸び続ける市場だという点です。景気及び内需の低迷を受け、既存サービスが伸び悩んでいる中でも、高齢者向けサービスは堅調に伸び続けてきました。そして、これから先数十年にわたり、拡大が見込まれている数少ない業界です。
65歳以上の高齢者人口は増加を続け、約30年後の2042年にピークを迎えると推計されています。人口が減少する中で、高齢者人口の割合は高くなり続け、現在の4人に1人の割合から、2.5人に1人にまで高くなると言われています。
（平成24年版 高齢社会白書）
冒頭でまだまだ伸びる市場であることが魅力だと言いましたが、ビジネスとしては魅力でも、社会としては非常に大きな問題を抱えています。高齢者人口の割合が高くなるということは、高齢者を支える人が少なくなることと同義です。現状で既に、高齢者向けサービスは、市場のニーズに追い付いておらず、質も量も高めていく必要があるマーケットです。
ニッセイ基礎研究所様のレポートでは、高齢者市場規模について下記の様に独自推計された結果が報告されている。
『2012 年時点で 100 兆円に到達した以降も、毎年１兆円の規模で拡大する見通しにある。』
（出典：ニッセイ基礎研究所・高齢者市場開拓の視点～100兆円市場が求める商品サービスとは）
高齢者ビジネスの市場では、拡大する市場の規模についてお伝えしました。では、その中身となるサービスはどのようなニーズを対象としているのか。ニッセイ基礎研究所様のレポートでは、６つの大きなニーズについて解説をされていますが、その中の一つに不の解消ニーズというものがあります。
以下、引用。『(1)「不の解消ニーズ」市場、つまり老化に伴う身体上、生活上に起こる様々な不便や不満、困りごとを代替、補完する形で解消する市場である（補聴器、杖、電動自転車、配食サービス、らくらくホン等）。このニーズへの対応は高齢者市場において中心的なものであり今後もさらに拡大していくことになろう。』（出典：ニッセイ基礎研究所・高齢者市場開拓の視点～100兆円市場が求める商品サービスとは）
私たちが提供している配食サービスは、自分で食事を作ることができなくなった（難しくなった）高齢者の方のニーズにより生まれました。人が生きていくために必要な活動の基礎となる「衣食住」は、高齢者サービスの中核であり、大きな責任とやりがいがあるサービスです。
私たちが提供している配食サービスの特長は、完全に調理されたものが毎日届くという点です。実際に私たちのサービスを利用されている方は、調理食品を買いにいくことや、ご自身での調理が難しい方が多くいらっしゃいます。また、メニュー構成から調理まで含め、プロによるサービスのため、栄養バランスの心配や調理者による味のばらつき等がほとんどありません。
一方で、高齢者の方の食事に関するサービスは多様です。在宅配食サービス以外にも、ホームヘルパーや家政婦による食事の用意、食材の宅配サービス、多種多様な調理食品や半調理食品の販売、施設での会食サービスなどがそれにあたります。しかし、内閣府の調査によると、これらの食事に関するサービスにおいて、最も利用したいサービスは「民間による配食サービス（34.3％）」でした。（出典：平成24年度高齢者の健康に関する意識調査結果（概要版））
このように、民間の配食サービスは社会のニーズを受けて、急成長している分野です。ただ、ちゃんとお伝えしておきたいのは、マーケット規模や成長スピードから想像するほど、短期で収益を確保することは難しい事業だということです。高齢者向け配食サービスは、コツコツと１食１食積み上げていくことで成功していく事業です。それが覚悟のいる部分です。そしてもう１つ、果たさなければいけない責任があります。それは、始めた以上続けなければいけない事業だということです。なぜなら、サービスを受ける高齢者の方の期待に背いてしまうからです。利用していただく方の中には、寝たきりで誰かの手助けがないと生きていけない方もいらっしゃいます。生きていくために必要な食事がつくれないから、私たちがお手伝いするのです。高齢者向け在宅配食とは、ボランティアではケアしきれない部分をビジネスにすることで、サービスを維持していく事業。間もなく訪れる、超高齢社会に必要なサービスなのです。
